ウォーターサーバーやミネラルウォーターを選ぶ際に、
「おいしさで選ばれる水」
「最高金賞受賞」
などの宣伝文句を見ると、
「水は味がないものなのに、どうやっておいしさがわかるのだろう」
と思われるかもしれません。
確かに水は味がないものなのですが、特定の水を飲んで「美味しい」と感じた経験は誰にでもあるものです。
水の美味しさを決めるものとは何なのでしょうか。
美味しい水を選ぶための基準とは?
究極の水を求める方のために、水の美味しさについて調べました。
水の味が異なる理由
水はもともと無味なものですが、成分や処理方法などで種類が分けられています。
まずは基本となる、水の種類についておさらいしておきましょう。
硬水と軟水
まず、水には「硬度」があります。
硬度とは、水の中に含まれる「カルシウム」「マグネシウム」などのミネラルの量を表した数値です。
含まれるミネラルの量が120mg/L以下は「軟水」、120mg/L以上は「硬水」と分類されます。
天然水とRO水
採水された水は、安全に供給するために雑菌等を除く処理をする必要があります。
山麓近郊などの汚染されていない水源で採水された水は、最低限の処理で供給することができます。
最低限の処理で提供される、自然の状態に近い水は「天然水」と呼ばれます。
天然水は「特定の水源から採水された地下水を原水とする水」と定義されており、特定水源として認められているのは、
- 井戸水(浅井戸・深井戸)
- 湧水
- 鉱泉水
- 鉱水
- 伏流水
- 温泉水
です。
対して、水の処理の際に「RO膜」という特殊な膜を使用するのが「RO水」です。
RO膜は「逆浸透膜」とも呼ばれる超微細孔のフィルターで、RO膜を通った水は不純物や化学物質を除いたピュアウォーターになります。
原水は水道水や湧水など様々で、メーカーによるでしょう。
RO膜を通った後の水は何も混ざっていない状態なので、多くのメーカーはそこにミネラルを添加して販売・宅配を行っています。
ミネラルウォーターの定義
食品流通局によると、天然水の中にも
- ナチュラルウォーター
- ナチュラルミネラルウォーター
- ミネラルウォーター
の分類があります。
特定水源から採取した地下水を原水とするものは「ナチュラルウォーター」と呼ばれ、その水に地層中のミネラルが自然に溶解した状態であれば「ナチュラルミネラルウォーター」とされます。
さらにナチュラルミネラルウォーターと同じ状態であっても、ミネラルの調整や原水の混合等が行われた場合には「ミネラルウォーター」と分類されます。
表記のルールを知っておくと、購入する際の参考にもなりますね。
参照:厚生労働省 ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン
酸性とアルカリ性
「アルカリイオン水」「弱酸性水」なんて言葉を聞いたことはないでしょうか。
水にはそれぞれ特性があり、pH値もそれぞれに異なります。
pH 値は1~14まであり、純粋な水はpHが7で「中性」の状態です。
しかし地質等の影響を受けて酸性に傾いたり、アルカリ性に傾くことがあります。
飲料水水質基準では、飲料水のpH値は5.8(弱酸性)~8.6(弱アルカリ性)と定められています。
水が酸性に傾くほどに味は酸っぱくなり、反対にアルカリ性に傾くほどに苦くなる性質があります。
ここまでで水の種別についておさらいしましたが、ここからはこの種別が美味しさにどのように関わるかを検証したいと思います。
「美味しい」と感じさせるものとは
前述で水にはそれぞれ性質があることがわかりました。
それぞれの性質が風味やのどごしに関係し、水の美味しさを左右します。
自分の好みの味の水を見つけるために役立つ、採水地や各数値と美味しさの関係を見てみましょう。
硬度と美味しさの関係
水には軟水と硬水があると書きましたが、日本人は軟水を美味しいと感じる人が多いようです。
理由としては、日本で採水される水はほとんどが軟水であり、小さい頃から軟水を飲んで育っているために軟水を飲みやすいと感じるようです。
軟水はまろやかで口当たりが優しく、緑茶や和食などにもよく合います。
料理にも飲用にも使いやすく、多くの人に愛される飲みごたえなのです。
硬水は反対にしゃっきりとしたのどごしです。
ミネラル配合量が多いため、健康のために硬水を飲用しているという人も多いでしょう。
スッキリとした飲み口のため、硬水でお酒を割ると美味しくなる、と感じる人もいるようです。
軟水と硬水どちらを美味しく感じるかは好みにもよりますが、割合で考えると軟水を美味しいと感じる人のほうが多いようです。
美味しいと感じる「温度」
水を飲んで美味しいと感じるとき、それは水の温度が適温だからかもしれません。
水はぬるいと生臭く感じ、反対に冷たすぎると味を感じなくなってしまいます。
適温は10~15℃と言われており、適温で飲むことで水はよりおいしく感じるようです。
同じ水でもまずく感じてしまうときには、冷蔵庫に入れて温度を調節するとまた美味しく飲めるかもしれません。
含まれる成分の差
RO水など後からミネラルを添加する水は、多くの人にとって飲みやすい配合を計算して添加を行っているため、味が一定で万人受けする味と言えます。
反対に天然水は採水地により含まれるミネラルが大きく変わり、味も変わります。
ミネラルの中には、味に関係するものと無味のものがあります。
中でも配合されると美味しくなるのは、
- カルシウム
- カリウム
- 二酸化炭素
などです。
反対に配合量が多くなると水がまずくなってしまうのが、
- マグネシウム
- 硫酸イオン
- 硫化水素
などです。
またミネラルの総量が多すぎると苦味や渋味が出てしまうため、ミネラルが多ければ良いというわけでもないようです。
さらにあまり知られていないのが、水に溶解している「二酸化炭素」とおいしさの関係です。
ほとんどの水には二酸化炭素が含まれており、その濃度がおいしさを左右するのです。
水中の二酸化炭素が少ないと味気なくなり、反対に多すぎると苦みを感じるようになります。
ちなみに炭酸水は二酸化炭素が大量に含まれた状態であり、飲んだときには刺激を感じます。
おいしいと感じる二酸化炭素の量の基準は3~30mg/Lです。
二酸化炭素は熱や時間経過により抜けてしまうので、採水後最低限の処理ですぐに出荷している水のほうが二酸化炭素量が多い傾向があります。
体調も味覚に関係する
上記の項目に加えて、体調も水の味を左右します。
・水が美味しく感じる
体内の循環が正常で、バランスが取れている状態ならば水を美味しいと感じます。
・水が甘く感じる
ホルモンバランス等により、体が火照ったりむくんだりしている可能性があります。
特に湿度の高い梅雨の時期には膵臓機能が弱りやすく、体がむくみやすいですが、ほとんどの症状が一過性です。
・水が酸っぱく感じる
体が水分不足になっているとき、水を酸っぱく感じるようです。
寝起きや冬の時期は室内も乾燥しがちなので、こまめに水分を摂る必要があります。
・水が苦く感じる
水が苦く感じる場合、ストレスや亜鉛不足が考えられます。
胃炎からくる胃酸過多を引き起こしている場合も苦みを感じやすいそうなので、症状が続くようであれば病院で相談すると良いでしょう。
・水がしょっぱく感じる
ストレス、長引く緊張状態は体を強張らせて循環を悪くし、腎臓など内臓の働きも弱めてしまいます。水がしょっぱく感じる場合には、適度な運動やストレス解消が必要でしょう。
これら体調に加えて、水を飲むときの環境も味覚を左右します。
同じ水を飲んでも、その日の気温や湿度により感じ方は変わるということです。
水のおいしさを決める!評価基準一覧
水のおいしさには様々なことが関係しており、個人の趣向に左右される点も多いのですが、水を一定の基準で審査しおいしさを測定している団体もあります。
おいしい水の選び方に迷っている方はぜひ参考にしてください。
おいしい水研究会
厚生労働省の目指す「おいしい水の供給」のために作られた研究会です。
おいしい水研究会によると、水のおいしさを決めるのは
- 蒸発残留物 30~200ml/L
- 硬度 10~100ml/L
- 遊離炭酸 3~30ml/L
- 過マンガン酸カリウム消費量 3mg/L以下
- 臭気度 3以下
- 残留塩素 0.4mg/L以下
- 水温 20℃以下
の7つです。
参照:厚生省(現厚生労働省)おいしい水研究会による「おいしい水の要件」
「蒸発残留物」とは水中に溶解している成分で、蒸発凝固した際に得られるカルシウムやマグネシウムなどの有機物です。
「遊離炭酸」とは水に溶けだしている炭酸ガス・二酸化炭素のことです。
「過マンガン酸カリウム消費量」とは、水中で消費される過マンガンカリウムの量を指します。
この値が高く消費量が高いということは、水が土壌の中で動植物の市街や排泄物などを多く分解しているということになります。
これらの評価基準をもとに全国の水道水を調査し、22の都道府県の1~3つの水源の水を「おいしい水」と認定しています。
例として、北海道では帯広市の札内川を水源とした水がおいしい水と認定されています。
引っ越しの際に
「せっかくなら水のおいしい地域に住みたいな」と考える方は参考にすると良いかもしれません。
モンドセレクション
モンドセレクションが評価しているのは食品だけではなく、天然水やミネラルウォーターもその評価の対象となっています。
- プレミアムウォーター
- コスモウォーター
- 富士の天然水 さらり
等はモンドセレクションを受賞しており、その美味しさが認められています。
モンドセレクションの評価基準は「味覚」「消費者への情報提供」「原材料」などで、各カテゴリごとに賞が贈られます。
審査は著名な専門家たちが行い、味覚や嗅覚を用いて味の持続性や香りを判断し、総合的な判断を下します。
賞は
- 優秀品質最高金賞
- 優秀品質金賞
- 優秀品質銀賞
- 優秀品質銅賞
に分かれており、最高金賞が一番高い評価となっています。
モンドセレクションは絶対評価がなされているため、定められた水準を満たした商品には全てに賞が贈られます。
そのため受賞商品が多く受賞基準を問題視する声もありますが、「最高金賞」や「金賞」は総合得点が80点以上の商品にのみ贈られる賞なので、それらの賞を受賞している商品は他よりも優れていると言えるでしょう。
国際味覚審査機構|International Taste Institute(iTQi)
国際味覚審査機構も商品の質を測るための団体ですが、モンドセレクションと異なり飲食物に対象が絞られています。
そのためより専門的に「おいしさ」を追求する評価団体だと言えるでしょう。
評価を行うのはシェフやソムリエであり、おいしいと感じる感覚を官能分析して味覚賞受賞商品を決定しています。
味覚賞は星の数で表され、
- 1つ星 おいしい商品
- 2つ星 特記に価する商品
- 3つ星 きわめて優秀な商品
とされています。
アクアソムリエ
ワインソムリエならぬ「アクアソムリエ」という職業があるのをご存知でしょうか。
ホテルやレストランなど、水を扱う様々な場所にて提供する水のアドバイス等を行う、水選びのプロです。
アクアソムリエの方によると、おいしい水とは
- バランスが良い
- 飲み心地が良い
- 常温で飲んでもおいしい
という3つの条件が揃った水だそうです。
本当においしい水を探す際には、常温で飲んでみてその味を確かめても良いかもしれないですね。
まとめ
「おいしい水を飲みたい」というのは全ての人の願いですが、本当に満足できる味の水を飲んでいる人は少ないかもしれません。
この記事で触れたおいしい水の見つけ方を参考にするなら、毎日飲みたいお気に入りの水を見つけることができるかもしれません。
水のおいしさを左右するものは、
- 硬度
- 温度
- 成分
です。それに加えて、
- 体調
- 環境
も味の感じ方に影響を与えるでしょう。
しかし水の成分表を見てもよくわからない、という方は
- おいしい水研究会
- モンドセレクション
- 国際味覚審査機構
- アクアソムリエ
などが出す評価基準を参考に水を選ぶと良いでしょう。
お水がおいしいと感じるなら、自然と摂取量も増えて健康効果が増すことも期待できます。
いつものお水をよりおいしいお水に替えて、無理のない健康習慣を始めてみませんか?